2021-06-12

美しいジーンズはインチで出来ている

なぜ、外国製のジーンズはインチで出来ているのか知っていますか。
それは、デニムやミシンがインチで出来ているから。生産する上で都合が良いのです。
特に、ミシン。縫製する時に、目に入る部分のミシンのパーツが、インチでできているので、いちいちチャコペンなどで印を付けなくても「目見当」がし易いのです。
それより何より、インチで作られたジーンズは、実は、デザイン的に人間の目に心地良いんです。
1インチ2.541cmという、現代の日本人にとっては切りが良くない数字に、心地良さの秘密が隠されています。

1inch(インチ)は2.541cm

ほとんどの日本人は、1cm(センチ)はこの位っていうイメージができます。
でも、1inch(インチ)て、この位っていうイメージができる人は少ないと思うのです。
それは、小学校で1インチは何センチですって教えてないし、そもそも、インチの物差しは売っていない。理由は、法律で決まっているから。
経済産業省のホームページには、計量法で決まっているから、インチのメジャーは販売禁止だよって書いてあります。

「計量法第9条第1項において、72の物象の状態の量を計量する計量器については、非法定計量単位による目盛又は表記を付したものの販売及び販売のための陳列を禁止している。」 と書かれています。

経済産業省のページはこちらから

法律の云々については、専門家にお任せしますが、私は、インチって、日本人には馴染みが無いので混乱してしまうから。あるいは、消費者にとってわかりづらいからなのではないかと思っています。

でも、インチって、実は、人の目に心地い良い単位なんです。美しさと言っても良い単位です。

車、バイク、自転車、家具、テレビ、カメラ、そしてスマホなどたくさんのモノがインチを基準としたデザインがなされています。もちろん以前までのジーンズもそうでした。

じゃあなんで、日本では、インチの心地よさや美しさが、一般の生活やモノづくりの現場に広まらないのか、不思議ですよね。 

私は、タッチイズラブ®︎ジーンズストアを運営する、ブルーデザイン株式会社代表取締役兼デザイナーとして、「インチは、人の目に心地良いんだよ。美しいんだよ。」といことを、声を大にして伝えたいと思っています。

皆さんは、インチのメジャーをお持ちですか?

法律で販売は禁止されてるんですけど(笑)、もし、インチのメジャーをお持ちでしたら、ご自宅のパソコンやテレビの画面を、対角線で測って見てください。13inch(インチ)とか27inchとか、割と区切りの良い数字になっているのがわかると思います。

さらに、お気に入りの外国製のデザインされた何かを測ってみてください。例えば車や家具やキッチン用品、ギターとかオーディオ機器のプラグなどなど。きっと、13 1/2inchとか、1/4inchとか「切りのいい数字」になります。

と同時に、今度は同じものをセンチで測って見てください。微妙な長さ、例えば34.3cmとか0.6cmとかになります。

インチのメジャーがなかったら、IKEAにお買い物に行った時に、売り場に下がっている、紙性のお買い物用のメジャーのインチの目盛りと、センチの目盛りの両方で、テーブルや棚のサイズを測ってみてください。

もし自分でデザインするなら、34cmとか0.5cmといったキリの良い寸法で良いんじゃないかなと思うかもしれません。

一般的には、センチでのモノ作りが前提

日本の一般的なアパレルメーカーのほとんどが、0.5cm刻みとか、2cm刻みとか、センチで「切りのいい数字」で型紙を作っています。仕様書と呼ばれる設計図も、センチで書かれています。
また、服装専門学校で使っている物差しもセンチ。

私の想像ですが、
「切りのいい数字」が「日本人には馴染みがある」
「小学校で教わる、測り方の時間では、センチで作った物差しが使われているから、日本人にはセンチがわかりやすい」
そう、一般的には思われているのではないかなと思っています。

(注:実際のアパレルに関しては、生産現場での誤差は必ず出てしまいます。誤差ゼロにするのは不可能。なので、企画段階では、「このコートの襟の幅は7cm」とか決めてますけど、お店に売っている商品は6.8cmとかになっています。)

「なんだかわからないけれど、なんか良いんだよね」という感覚

先ほど、測っていただいた、お気に入りのデザインの、車や家具やパソコンやキッチン用品などを見たらどうでしょうか?

お気に入りのデザインって「なんだかわからないけれど、なんか良いんだよね」という感覚を持たれていると思います。

センチではちょっと中途半端なモノでも、インチだとすんなり測れる。
この「ほんの少しの差」が、美しさにつながっている気がしませんか?

私は、「インチの美しさ」が、日本人の目にもわかっているのだと思います。
だから、外国製のデザインの、家具や工業製品に人気が出たりする。

私はリーバイス時代に、「センチではキリが良く無いけれど、インチならキリの良い数字になるデニム商品」ばかりでした。
理由は仕様書もそうだし、ミシンがインチで出来てるし、デニム生地自体もインチで生産されるから、インチの方がリーバイスの自社工場などの生産現場では都合がいい。
そして、インチで企画され、生産管理されるジーンズの「工業製品としての美しさ」を経験してきました。

加えて「インチの仕様書なのに、センチで生産管理されたデニム製品は偽物っぽい」というのを目にしてきました。
偽物っぽいというのは、パッと見でリーバイスらしくないと判る。「あー、やっぱりインチじゃないと美しくないな」と思ってました。

(注:日本のサプライヤー経由で、リーバイスのジーンズが生産される場合、センチにした方が工場の現場のオペレーターに伝わり易い場合は、”微妙に端数の出るセンチ表記”で管理されていました。)

インチの美しさを伝えたい

タッチイズラブ®︎ジーンズを企画するにあたり、お客様に
「良いジーンズを穿いて欲しい」
と思っていました。

さらに、
「良いジーンズってインチで出来てるんだよ」
ということもわかって欲しかったんです。

インチの美しさは、きっと外国の人だけじゃなくて日本人にも判る。
だって、外国の人に、尺や寸といった日本の伝統的な工業製品の美しさが評価されているから、逆も然りだと思うから。
それに、車や家具やパソコンやテレビの画面だってインチで出来てるモノを、日本人は当たり前のように生活に取り入れているから。

タッチイズラブ®︎ジーンズは、部分部分の寸法やバックポケットの空間、そしてステッチの間隔やボタンのサイズまで、インチで美しさを表現しています。

インチのメジャーは、売ってはいけないことになっているけれど、海外の雑貨屋さんなどで見かけたら是非とも買って、いろんな、お気に入りのモノを測ってみてください。

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